蛇 足 編 【 疑 惑 】
 
 
 


go index
go 14th


御門 : 「珍しいですね、芙蓉。そんなに龍麻が気になりますか」
芙蓉 : 「―――申し訳ございません」
御門 : 「責めているわけではないのですよ。それより芙蓉、今日の龍麻を見ていて何か感じましたか?」
芙蓉 : 「ほんの僅かですが、・・・いつもより《氣》が乱れていたように見受けられました。どこか具合がお悪いのでしょうか」
村雨 : 「ヘッ、何寝惚けたこと言ってんだよ。どう見ても絶好調だったじゃねェか」
芙蓉 : 「それは・・・そうですが・・・」
村雨 : 「ただ、今日の先生は押し倒したくなるほど凄まじい色気だったな」
御門 : 「ならば実践してみればよいでしょう。私は止めませんよ」
村雨 : 「俺はまだ命が惜しいんでね」
芙蓉 : 「お身体でなければ、何か心配事でもあるのでしょうか」
村雨 : 「・・・先生の心配事って言や、ひとつっきゃねェだろうよ」
御門 : 「―――待っておいでなさい。私が直接龍麻と話してきましょう」

(この辺りの詳細は本編・第拾四話【景】をご参照ください)

村雨 : 「遅かったな。随分と込み入った話をしてたみてェだが」
御門 : 「思い過ごしですよ。芙蓉が心配していた、と伝えただけです」
芙蓉 : 「晴明様・・・」
御門 : 「ところで村雨。以前小耳に挟んだのですが、蓬莱寺が鍛錬前日に龍麻の部屋に泊まるというのは本当ですか?」
村雨 : 「らしいぜ。昨日も二人で大荷物持って歩いてやがったし、間違いねェだろう」
芙蓉 : 「では龍麻様は、具合の悪い蓬莱寺様を心配されて・・・?」
村雨 : 「だったら、ちゃんと理由を言うんじゃねェか?」
御門 : 「察するに―――ああ、少し失礼しますよ。龍麻に言い忘れたことがあるので」

(再び呼び止められた龍麻、御門と二、三言交わすと手に持っていたマフラーをしっかり巻いて去っていきました)

村雨 : 「何だったんだよ、一体」
御門 : 「地上との気温差が激しいですからね。今は暑くとも早めにマフラーをしておくように勧めたのですよ」
村雨 : 「あの先生が寒さに参るようにゃ見えねェけどな。だいたいアレは壬生への義理で持ってるだけだろうが」
御門 : 「ですが織部姉妹と話したいようでしたから。―――巫女方には目の毒というものでしょう」
芙蓉 : 「目の毒、と言いますと?」
御門 : 「この時期に虫刺されもないでしょうからね」
村雨 : 「おいおい。・・・ってこた京一の奴、とうとうやっちまいやがったのかよ」
芙蓉 : 「・・・少し口を慎みなさい、村雨」
御門 : 「しかし、それにしては解せないのですよ」
村雨 : 「―――待てよ。もしかして俺たちは、とんでもねェ勘違いをしてたってことか!?」
芙蓉 : 「?・・・私には、よく理解できないのですが・・・」
御門 : 「村雨にお聞きなさい。私はこれ以上この件に関わりたくありません」
村雨 : 「俺だって考えたかねェよ。だが、こうも条件が揃ってちゃな」
芙蓉 : 「どういうことです、村雨」
村雨 : 「今日の先生は絶好調な上に色気は倍増し。ところが昨夜一緒だったはずの京一は休みだ」
芙蓉 : 「ですから蓬莱寺様の具合が悪いのではないかと・・・」
村雨 : 「―――どこの具合が悪ィかが問題だよな」
芙蓉 : 「・・・・・・」
御門 : 「帰りますよ、芙蓉。―――今の話は忘れなさい。いいですね」
芙蓉 : 「―――御意」
 
 
 


go index
go 14th