望星
小さな頃から精霊の声を聴くことの出来たわたしには、少しだけ未来を知る力がありました。
瞼の裏に描かれるのはいつも決まって儀式の当日。わたしが精霊に身を捧げし時のこと。
アルマ・キナンの見慣れた風景と厳粛な顔つきの村人達が居並ぶ中、祭壇へ向かうわたしの隣には見知らぬ佳人の姿がありました。
月の光さながらに輝く銀色の髪と透き通るような紫水晶の瞳。
夜光花の光に包まれて静かに涙を流す、とても……とても綺麗な人。
ずっとあなたに会いたいと思っていました。
出逢って、共に過ごせた日々はほんの僅かな間だけだったけれど。
あなたはわたしが考えていた以上に、気高く強い人でした。
想像していたよりも遙かに、心優しい人でした。
あなたがわたしのために怒ってくれたことが……哀しんでくれたことが嬉しかったのだといったら、呆れられますか?
わたしがこの身を捧げることで大きな運命を背負うあなたの役に少しでも立つことが出来るのなら。
わたしの祈りがあなたの苦しみを少しでも癒してあげる術となるのなら。
それはとても幸せなこと。
だから、わたしは祈り続ける。魂だけの存在となっても。
ただひとつの存在に巡り会わせてくれた星と運命に感謝をして。
あなたに精霊の加護がありますように……。
2003/01/26 UP