introduction
空を渡りし風が啼く。
からからと、カラカラと。空々と――。
月の女神が軽やかに紡ぐ運命の糸が。
乾いた音を立てて回る、時の歯車に絡み取られていく。
教えてください
運命とは定められたものなのですか……
問いかけを重ねるほどに、虚しさは増し。
答えを得られぬままに、心は病んでいく。
災いは天より降り来たりて、避ける術を与えず。
哀しみはこの手の平より生まれ、果てもなく拡がっていく。
これから綴る物語は。
人によっては英雄譚と称するもの。
また、ある別の人にとっては目を覆うほどに忌みたる歴史の汚点。
見る者によって真実は形を違え。
立場の違いによって結末は明暗を分かつ。
だから、僕が話すことはあくまでも僕から見た事実に過ぎない。
特別な脚色はしてないけれど多少は個人的な主観が混じってしまうだろう。
そして、これを聴いて君が何を思うかは、僕にはわからない。
それでもいいと言うのなら、少しだけ耳を傾けてくれるかな?
じゃあ、そろそろ始めようか。
ひとつの国の始まりと終わり。多くの生と死が絡み合った長い長い物語を……。
2001/11/26 UP