緋勇が転校してきてから数日が過ぎた。
京一と緋勇はすっかり意気投合――京一が一方的につきまとっているという意見あり――し、醍醐も交えて三人でいる姿が学園のあちこちで見かけられるようになった。
本来、一匹狼気質の京一が特定の友人を作る事自体珍しく、杏子などには「どういう風の吹き回しか」と幾度となく訪ねられたりもしたが。気に入ってしまったものはしょうがない。
醍醐にしても同様で、一度、放課後に手合わせをして以来、緋勇に対して一目も二目も置くようになっていた。
緋勇との立会いを望んだ醍醐は、半ば強引に彼をレスリング部へ連れ込んだ。
結果は、醍醐の惨敗。端で見ていた京一でさえ、ぐうの音もでない幕切れであった。
「どうやら、あいつは古武術の使い手らしいな」
醍醐はまだ起き上がれないのか、マットの上に伸びている。
「みてーだな。俺も驚いたぜ。あいつあれでも佐久間のときは、かなり手加減してたんだな」
緋勇が困っていたと言っていた理由がやっと呑み込めた。緋勇は佐久間に大怪我を負わせてしまわないかと危惧していたのだ。
「緋勇はどうした?姿が見えないが……」
「お前が目を回している間に、な。気を使ったんだろ」
目を覚ましたとき、自分がいたのでは醍醐が気まずい思いをするかもしれないと考えたらしい。京一に後を託して帰っていった。
「そうか。悪いことをしたな」
醍醐は起きあがろうとして小さく呻く。うまく受け身がとれなかったため、打ちつけた腰がまだ痛む。
だが、躰の痛みとは裏腹に気分は高揚していた。
「なんだよ大将、負けたにしちゃ、いやにすっきりした顔してんじゃねーか」
「ああ、あいつの拳には、人の迷いを断ち切るような、そんな力が感じられた。そのせいかもしれんな」
京一が素直に同意する。
「俺にもなんとなくわかったぜ」
緋勇の持つ澄んだ、それでいて凛然とした気。ああいうのを清冽と称するのだろう。
「爽快な気分だ」
醍醐は両腕を伸ばし、大きく息をついた。それから、ふと気づいたように京一見上げる。
「そういうお前はどうなんだ?」
「へっ、俺?」
「そうだ、お前もあいつと手合わせしてみたいんじゃないのか?」
問われて考える。
「あ~……駄目駄目。俺なんか数秒でのされちまうよ」
おどけると、「嘘をつくな」と醍醐が笑った。
強い人間に挑んでみたくなるのは京一とて同じだったが、何故か龍麻と戦いたいという気持ちは生まれてこなかった。
そう、京一が望むのは、彼と対峙することではなく――。
「……いち、京一、どうかした?」
放課後のラーメン屋。
龍麻の顔を見つめたまま放心していた京一は、その声に我に返る。
「さっきから、ぼーっとしてるけど、どこか具合でも悪いのか?」
「んー。ひーちゃんの顔に見とれてた」
決して貧弱ではないが、どうみても格闘向きには見えない龍麻が、醍醐のような巨漢を一撃で伸したのだから世の中ってわからない。などと考えていたとは、さすがに口にできなかった。
「どうせ悪いもんでも拾い食いしたんでしょ」
まじめに相手をしないほうがいいよ。と、小蒔が塩ラーメンを啜りながら龍麻に忠告する。
「やかましいわ!だいたいなあ、俺とひーちゃん、ついでに醍醐とで男の友情を深めようって所に、なんでお前がついてくるんだよ!」
「俺はついでか」
「いいじゃない、ボクだってラーメン食べたかったんだもん。ねッ醍醐クン」
相槌を求められた醍醐に、小蒔の言葉を否定できようはずもなく。
「俺も大勢の方が楽しいな」
龍麻にそう言われては、京一も口を噤むしかなかった。
(ホンッと、フォロー上手だよなぁ)
小蒔と京一の小競り合いは以前からのものだ。小蒔は京一のちゃらんぽらんな態度が我慢できないらしく、ことあるごとに突っかかってきた。京一もまた、よせばいいのに面白がってからかうものだから、二人の関係は下降の一途を辿っていたのだ。
それが、いまではこうして一緒にラーメンを啜っている。
出会ってまだ数日だというのに、龍麻が自分達にもたらした影響は少なくなかった。
「なあ、京一」
「何、ひーちゃん?」
何度も言い続けてようやく下の名前で呼んでもらえるようになった京一は「ひーちゃんって声もいいよな」などと、しょうもないことを考えつつ返事をした。
「なんで『ひーちゃん』なんだ?」
「あ?」
「俺のこと、なぜ急にそんなふうに呼び出したのかなって」
「だって『緋勇』だろ?」
だから『ひーちゃん』。
「…………」
「あっ、いいなそれ!ボクもそう呼ぼうかな。ね、いいでしょ?」
「…………」
もはや修正は聞き入れられそうにない。
意味もなく胸を張る京一と、一緒になってはしゃぐ小蒔を見て、龍麻は諦めた。脇では醍醐が同情の眼差しを注いでいる。
と、そこへ血相を変えた杏子が飛び込んできた。
「ちょっと、大変よ大変よ!」
ラーメン屋の引き戸が大きく開け放たれ、派手な音を立てる。
「遠野さん。どうしたの?」
龍麻は突発的な登場に動じることもなく、杏子を振り仰いだ。
「いやね。アン子って呼んでっていってるでしょ。みんなそう呼んでるんだから……ってそれどこじゃないのよ!大変なんだから」
「ちょっとアン子ってば落ち着いてよ」
「あんたたちなに落ち着いてるのよ!そんな場合じゃないでしょう!」
杏子は一喝すると、卓上のコップを掴んで一気に中身を飲み干す。
「あーっ。俺の水!」
「うるさいわね、ケチケチしないでよ。とにかく!あんた達の力が必要なの。お願い一緒に来て!」
騒ぎ立てる杏子に、龍麻はこれはラーメンどころではないな、と本日二度目の諦めを覚え静かに割り箸をおいた。
最近、旧校舎に化け物がでるとの噂が学園内で囁かれている。新聞部である杏子は部長の面目にかけて真相を突き止めようと、美里を連れ勇んで出向いていったのだが。
「途中ですっごい大きな蝙蝠に襲われて……美里ちゃんが、囮になってあたしだけを逃がしてくれたの」
「なんでぇ、蝙蝠か」
杏子があんまり騒ぐから、何事かと思えば。京一は肩の力を抜いた。
「ただの蝙蝠じゃないのよ!すっごく大きくて、牙だってこーんなっ!」
こーんなよ!と人差し指と親指を広げて京一の目の前に突きつける。
「どうしよう。もし、美里ちゃんになにかあったら……あたし、あたしが無理にお願いしてついて来てもらったのに……」
「わあっーた、わかった。さっさと美里を見つけて帰ろうぜ!」
京一は、ぽんぽんっと半泣になった杏子の頭を叩いた。
「ん……」
普段はおちゃらけてても、こういったとき京一は頼りになる。杏子は涙を拭い頷いた。
旧校舎は老朽化が進み、いつ床や天井が抜けるとも知れないため生徒の立ち入りを禁じている。
だが、入ってはいけないと言われれば入ってみたくなるのが人情というもので、こっそりと逢瀬を楽しむカップルや、授業をさぼる生徒などが、教師の目を盗んでは頻繁に出入りしていた。
化け物の噂は、彼等が発生源となっているらしい。
一同は繁みに隠された抜け穴から、鉄柵をくぐり抜けると、廃屋の中へと足を踏み入れた。
先ほど杏子達が通ったという足取りを追い、階段を上がる。そこから右手へ進もうとしたところで、龍麻が前触れもなく躰の向きを変えた。
「龍麻?どうした、遠野が進んだのはそっちじゃないぞ」
醍醐が呼びかけるも、振り返ろうとしない。
「……美里はこっちだ」
「えっ、うそ。なんでわかるの?」
小蒔が目を丸くした。
「なんとなく。でも間違いないと思うよ」
4人は顔を見合わせる。龍麻の示す先は、突き当たりに教室がひとつあるだけだ。
「ボクちょっと見てくる!」
「あっ待ってよ」
いち早く小蒔が駆け出し、杏子が後を追った。
醍醐と京一は困惑を隠し切れない。龍麻がいい加減なことを言う性格ではないことは短いつきあいの中でも解っているが……。
「葵……いる?」
半信半疑で戸に手をかけた小蒔が、あっと声を上げる。
「桜井ちゃん!どう……っ!!」
続いて教室をのぞき込んだ杏子も、息を飲み込んだ。
「どうした?美里はいたのか!?」
戸口で立ち竦んでしまった二人に、醍醐と京一も駆けつけ……。やはり目前の光景に度を失う。
教室の天井を黒く塗りつぶす蝙蝠の群。
口元からのぞく、尖った牙と鋭い爪。三日月型の瞳孔。羽を広げれば小型犬ほどもある全身。それは、どうみても物語に出てくるバンパイアの僕(しもべ)そのものだった。
「お、おい……。日本に吸血蝙蝠なんていたっけか?」
京一が顔を引き攣らせる。
「それ以前に、あれほど大きなやつも生息していないぞ」
答える醍醐の声も、堅かった。
だが、彼らが気後れしている理由はそれだけではない。
教室内を仄かな青白い光が照らしている。
汚れなき泉を思わせる清浄なそれに、蝙蝠たちは怯え戸惑っているように見えた。
その光が最も色濃い場所に、ひとりの少女が横たわっている。
龍麻は入り口を塞ぐ者達を軽く押しのけると、躊躇うことなく教室の中へ足を踏み入れた。
蝙蝠にも光にも頓着しない龍麻に、ぎょっとなった京一が慌てて後を追いかける。
意識を失い、ぐったりと投げ出された四肢。緑の黒髪。倒れ付している少女は、近づいてみれば確かに自分達の友人である美里葵だった。
龍麻は片膝をつき、美里を抱き起すと何事か囁く。
「う……ん、龍麻く、ん……私……」
うっすらと美里が目を開ける。同時に彼女を包んでいた光が威力を失い、すうっと消えていった。
「あおいーっ!」
「美里ちゃん!!」
友人の声に呪縛がとけたように、小蒔と杏子が教室に飛び込んでくる。
しかし、我を取り戻したのは彼女達だけではなかった。蝙蝠達もまた、お預けを解かれた犬のごとく餌を目掛けて突っ込んでくる。
やはりあの光が守護の役割を果たしていたのだろう。頭上すれすれを掠めていった黒い羽に、小蒔が悲鳴を上げた。
龍麻は手早く脱いだ上着で蝙蝠を追い散らすと、ふらついている美里を杏子に預ける。
「遠野、桜井。美里を安全なところへ」
「あんたたちはどうするのよ!?」
杏子は美里の肩を支えた。見たところ大きな怪我もなく安堵を覚える。
「俺達はここでこいつらの足止めだな」
京一が木刀を握った方の肩をぐるぐると回した。
「そういうことだ」
醍醐も指をパキパキと鳴らす。
「でも……っ!」
「いいからっ。早く行けって!」
「うん。そうだねアン子は葵を早く保健室に連れてってあげてよ」
「おい、桜井?」
小蒔は背負っていた荷物を降ろした。包みを解くと中から現れた弓に手早く弦を張る。旧校舎へ入る前、念のためにと弓道部の部室によった甲斐があったというものだ。
まさか、本当に使うことになるとは思わなかったけど。
「ボクも戦うよ」
「駄目だ!そんな危険なこと……っ!?」
ひゅっと、醍醐の頬の横を矢が通り抜けた。
硝子をひっかいたような不快な音が耳のすぐ近くで響く。
醍醐の肩を掠め、矢に貫かれた蝙蝠がぱさりと床に落ちた。
「ほら、ボクだって役に立つでしょ」
「じゃあ桜井は、遠野達を教室の入り口まで無事に送り届けてくれるかな。その後は、蝙蝠が外に出ないように入り口を護っていてくれるとありがたいんだけど」
「うん。わかった!がんばるよボク」
龍麻の要請に、小蒔が顔を輝かせる。
「おい、龍麻っ……」
「ぼさっとしてんなよ醍醐。さっさとこいつら片付けねーと、夜が明けちまうぜ」
醍醐の抗議を京一が遮った。
心配はもっともだが、小蒔の性格を考えれば、何を言ってもここは引かないだろう。だったら無鉄砲に動かれるより、こちらから指示した方が得策だ。
少なくとも龍麻は、教室内では一番安全な場所に小蒔を誘導している。しかも、本人のやる気を削がない言い回しでだ。
「醍醐は桜井について、近づいてくる奴だけ相手して。彼女から離れないようにするんだ」
小蒔には聞こえないよう、小声で伝える。
離れた場所の敵を倒す術のない醍醐は、動き回ったところでたいして益がない。だが、敵を待ち構えるというのは存外に忍耐力を要する。すぐ傍で、大立ち回りをしている京一達がいるなら尚更。龍麻は小蒔の護衛も兼ねさせることで、そんな醍醐の焦りを潰す方法を選んだのだろう。さらに、自分が近くで護れるなら、醍醐も小蒔の参戦にそう渋い顔はしまい。
京一は口元を愉しげに歪めた。
(やっぱこいつただ者じゃねェよな)
戦いのさなか、広い視野を持ち戦局を見渡せる能力をもつ者は稀だ。戦国時代にでも生まれていれば、ひとかどの将となれたであろうに。
(んー。でもそれじゃあ、俺とひーちゃんは会ってないか)
それは、ひどくつまらないことのように思えた。
龍麻が放った拳が、天井近く飛ぶ蝙蝠を吹き飛ばす。佐久間のナイフをうち砕いたのと同じ、《氣》の力を用いた『掌底・発剄』という技だ。
「京一ッ!」
「おうッ!!」
京一は龍麻によって弾き飛ばされた蝙蝠に先んじ、待ち構えて叩き落とす。足元に黒い塊がうずたかく積みあがっていった。
「しっかし……こう数がおおくちゃな……」
どのくらいそんなことを繰り返していただろうか。
蝙蝠の数は半数近くになったが、数を減らしたことによって逆に逃げ道を多く与ることになってしまった。せわしない羽ばたきは捉えにくく、おのずと京一達の息も上がってくる。
「小蒔、ここを開けてくれる?」
入り口の戸を背に陣取っていた小蒔に、戸を叩く振動が伝わった。
「葵!?具合はもう大丈夫なの?」
少しだけ開けた戸の隙間をすり抜けてきた親友に、小蒔の顔がぱっと明るくなる。
「ええ、心配かけてごめんなさい」
「どうして戻ってきたんだ」
醍醐が額の汗を拭う。美里は聖女の微笑みを浮かべると、真っ白なハンカチを差し出した。
「皆が戦っているのに、私だけ安全な場所にいるなんてできないわ」
目に入ってくる汗をハンカチで抑えられると、不思議と疲れが引いてくるような感じがする。
前線に詰めていた京一と龍麻も、戻ってきた。
「美里、もういいのかよ?」
「なんともないわ。龍麻君も京一君もありがとう」
龍麻は美里をじっと見つめていたかと思うと、おもむろに口を開いた。
「美里、さっき倒れてた時のことを覚えてる?あれ、もう一度できないかな」
蝙蝠を寄せ付けなかった光を、出せないだろうかと聞く。
「え、ええ……」
龍麻に抱き起こされた時のことを思い出したのだろう。美里が頬を両手で覆った。
「自分でもどうしてなのか、よくわからないのだけれど……たぶん、できると思うわ」
龍麻が力強く頷いた。
「じゃあそろそろ、決着をつけようか」
「龍麻?」
「ひーちゃん?」
怪訝な顔をする京一と醍醐に向き直る。
「教室中を飛び回られるから捕まえにくいんだろ?だったら、蝙蝠を一カ所に集めよう。俺が中央、京一と醍醐はそれぞれ左右から追い込んで、教卓の方へ誘導するんだ」
「ボク達は?」
「桜井は基本的にはさっきと同じ。俺達の手から逃れた蝙蝠を狙い落として欲しい。美里は桜井の側で意識を集中していてくれればいいから」
「なるほどな」
美里の光は蝙蝠達を寄せつけない。彼女が戻ってきてくれたことで、醍醐は小蒔を護る必要がなくなった。3人がかりならさほど労せずに蝙蝠を追うことができるだろう。
龍麻の言葉に従い、廊下側に京一が、窓際には醍醐がつく。
醍醐は窓際に積み上げられた椅子や机を上手く利用して、拳を振るっていった。足場が悪い分威力は落ちるが、当面は倒すことが目的ではないので問題はない。
3人の隙をつき、大きく間合いを外れたものは、小蒔が弓の冴えを見せた。
振り返れば、美里が小蒔の隣で祈るように指を組み合わせている。その全身から立ち上る淡い光から逃れようと、蝙蝠達が反対側へ移動を始めた。それが結果的に龍麻達の動きをも助長する。
龍麻達の距離は次第に縮まり、互いが手を伸ばせば届くまでになった。教卓の台に上がれば、京一の木刀なら余裕で間合いに入る。
頃合いと判断した京一が、気合いを発した。
「よっしゃっ!ひーちゃん、醍醐、いくぜっ!!」
「おう!!」
醍醐が吼え、龍麻が拳を固める。
《氣》を集中させる龍麻を頼もしく思いながら、京一は大上段に木刀を構え、醍醐は腹に力を込めた。
全身を熱が駆けめぐる。互いの《力》が共鳴する――。
三者の円陣の中心に巨大な光の柱が立ち上った。
蝙蝠達は溢れ返る光の奔流に次々と焼き尽くされた。
美里と小蒔は、あまりの眩しさに目を庇う。
弾けた光は、しかしすぐに収まり、気がつけば教室内に京一達以外の生き物はいなくなっていた。飛び回っていたものはおろか、床に転がっていた死骸でさえ、跡形もなく消え失せている。
「な……んだ今のは……」
醍醐が呆然としつつ唾を飲み込んだ。
「お……俺達がやった、んだよな」
信じがたくとも、躰には《力》を放出した後の倦怠感が色濃く残っている。
震えの走る己の手の平に視線を落とすと、周りを青白い光がうっすらと覆っていた。
これは美里と同じ……。
―――目覚めよ。
「うっ、なんだ!?」
音ではない。頭の中に直接届く何者かの『思念』。
「京一、どうした……うっ」
―――目覚めよ。
今度は醍醐にも聞こえたらしく、額に手を当てしきりと頭を振っている。
京一を包む光が強度を増し、醍醐へ、小蒔へと伝播した。
頭に響く声は徐々に大きくなり、精神を掻き乱される。
―――目覚めよ。目覚めよ。目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ目覚めよ…………・・
「だーっ、うるせーっ!」
外側からのし掛かり、激流となって巡る言葉が、頭を割らんばかりに反響している。
内側を突き破り、《力》が溢れ出そうと渦を巻く。
躰と精神が同時に悲鳴を上げる。
意識が闇に呑まれる寸前、京一は辛そうに自分たちを見つめる龍麻の姿を視界の隅に捉えた。