第五章
統合編

思えば遠くへきたものです/カイネ

ついにやってきました第五章。これで様々なことに決着が付くはずなんですけど……めでたいって言えるんでしょうかね~。
まあ、今更引き返すことは出来ないんですし、行けるところまで行くしかありませんよね。
第5章はルビークの虫使い、フランツさんがビュッデ・ヒュッケ城を訪ねてきたところから物語が始まります。
二級市民への格上げを約束されて頑張っていたフランツさん達でしたが、ここへ来て事態が変わりました。ハルモニアに裏切られてしまったんですね。
フランツさんは命からがら逃げ出し、恥を忍んで炎の使い手達に助けを求めに来ました。これってかなり勇気のいることだと思うんですよ。敵対する相手の本拠地に単身で乗り込むなんて、下手をすればなぶり殺しにされちゃうことだってあるわけですからね~。プライドの無い奴だって卑下されてもしかたない立場になるわけなんですし。
それでも、フランツさんはルビークのため……というよりイクさんのために決起されたみたいです。これは炎の使い手さん達としても、動かないわけにはいきませんよね。特にグラスランドには50年前に彼等を見捨ててしまったという負い目がありますし。
……というか、今回ルビークが裏切られた原因は間違いなく新たに結成された炎の使い手にあると思うんですよ。ハルモニアが炎の使い手の力を殺ぐための道具として選んだのがルビークだったわけですからね。
纏まりのない軍を無理に派遣すれば最悪の事態を招くことにもなりかねません。待ち伏せしていたハルモニア軍と戦闘になり、軍もルビークの民も全滅~♪なぁんて結末になる可能性が大だったりします。かといって見捨ててしまえば炎の使い手に対するグラスランドの民の心証は思いっ切り悪化してしまうでしょう。
さすが良いトコロ突いてきますよねハルモニアも。もし、炎の英雄さえ現れなければ、ルビークの人達は不遇をかこつこともなくハルモニアの民としての一歩を踏み出せたことでしょうに。お気の毒様です。

なんにせよ今の段階で軍をルビークに差し向けることはできません。そこで持ち出されたのが少数精鋭だけでルビークに向かおうという案です。これなら敵軍と対峙する力はなくとも、状況如何によっては捕らわれた村人さん達を逃がす方法が見つかるかも知れません。
そういうわけでゲドさんとそのお仲間の人達がルビークに向けて出発することになりました。真の雷の紋章の持ち主であるゲドさんならたとえ少人数であってもルビーク側への面目が立ちますし、もともと彼等のお仕事はこういった作戦を遂行することですから、これ以上の適任者はありませんよね。

舞台は一路ルビークへ。この先しばらくはゲドさん視点で物語が進むことになります。

2002/12/08 (Sun) (Mon)
  

第五章
ゲド編

トウタは随分と大きくなりましたね/ホウアン

ルビークについてみると、村は蛻の殻でした。
ハルモニアは村人達をクリスタルバレーへ連行するつもりだという話でしたから、既に送られてしまった後なのかもしれません。
ここに来るまでの間にレベルを上げたり、平頭山で蟹鍋パーティをしたりして時間を掛けてしまいましたからね。しかし、姿は蟹であるとはいえエリアボスといえば魔物でしょうに。皆さんお腹を壊されなかったのでしょうか。まあ、今ではトウタも立派な医師となったようですから心配することもないのかもしれませんが。

トウタ「そんな、まだまだ修行中の身です」

その謙虚な気持ちを忘れてはなりませんよ。医学というものは日夜進歩していますから、生涯を通じて学ぶ気持ちでいなければね。

ああ、少し話が逸れてしまいましたね。
一緒に美味しく蟹をつついていたことも忘れ、フランツさんが少しだけゲドさんを恨めしく思って唇を噛みしめていると、空から一匹の虫が降り立ちました。
虫に跨っていたのは、フランツさんと同じく逃げ出してきたという虫使いの青年です。彼の話によれば村人達はセナイ山に連れて行かれ、そこでハルモニアの神官が真の紋章を継承するための儀式に使われるのだということでした。その口振りからすると捕らわれた人々は今にも生贄として捧げられてしまいそうです。
しかし、これは少々タイミングが良すぎるようですね。
フランツさんが逃げ出したことにより警備が強化されたであろうハルモニア本国の軍が、二人目の逃亡者を許すことなどあるのでしょうか。
無論、逃げ出してこられた方は必死だったのでしょうし、診たところ衰弱しているのも演技ではありません。
しかし、ハルモニアの側からしてみると、より大きな獲物を捕らえるために籠の小鳥を意図的に解き放ったような気がしてならないのです。
とはいえ、村人達を放っておくわけにはまいりません。ここはあえてセナイ山へ向かうことにしたしましょう。

2002/12/11(Wed)
  

108星が集まるまでもう少しです/カスミ

思っていたとおり、セナイ山で待ち受けられていたのはルックさんでした。
彼の狙いは最初からゲドさんだったのですね。真の風の紋章と先に奪っておいた真の土の紋章……その二つの力を用いてゲドさんより真の雷の紋章を引き剥がしてしまったのです。

ルックさんが何故こんなことをするのか……それを問う暇はありませんでした。彼の召還した魔物の群れが襲いかかってきたからです。
ゲドさん達は村人達を守って力の限り闘いましたが、剣を振るい続けるにも限界があります。仲間達も体力を消耗し、これまでかと思われたとき、助けに現れたのはゲドさんをライバル視しつづけていたデュークさんでした。
彼等の協力により魔物の隙をついて村の人々を無事に逃がすことに成功したのです。
助け出された村人達はゲドさんに感謝をし……そして同じだけフランツさんを憎みました。ハルモニアに裏切られた怒りがすべて彼に向かってしまったのです。
フランツさんは彼等のために頑張って闘ってきたのに……。

ハルモニアに裏切られる前はフランツさん達虫使いに媚びさえ売っていた者達が、立場が変わった途端に手の平を返してしまったのです。
何もせず、ただ助けを待っていただけの者にフランツさんのことを詰る資格などないと──怒りを爆発させたゲドさんが村人のひとりを殴り倒しました。

フランツさんと彼を庇ったイクさんを連れてルビークを後にした時、村人達の人気を取っておけばよかったのにと告げるエースさんに対し、ゲドさんはただ苦笑のみを返されました。

ゲド「あいつはそういうことが得意だったんだが……俺はどうも潔癖に過ぎるらしくてな」

彼の示す「あいつ」とは炎の英雄殿のことなのでしょう。けれど、わたしはそういうゲドさんの態度の方が好ましく思えます。
わたしが信じ、ついていこうと決めた方も気高く崇高な志を持つ方でした。あの方もこんな時はきっとゲドさんと同じような態度に出られたに違いありません。

ところでルックさん、カイネ殿にセラウィス様を獲られたために非行に走ってしまったというのは本当のことなんですか?

ルック「…………。誰が、そんなこといったんだい?」

ビクトールさんです。ルックさん、そんなあなたの気持ちは分からないでもありません。でも、このようなことを起こしてしまう前に何故ひと言、わたしに仰ってくださらなかったんですか?わたし達が力を合わせればもっと違う道が見つかったかもしれないのに。

ルック「……あの熊、いい加減なことを……で、一応聞いておくけど君の言う『違う道』ってなにさ」

わたしはこう見えても忍の里の副頭領です。カイネ殿は確かに生命力の強そうな方ですが、ロッカクに古来より伝わる秘伝の技とあなたの魔導の力を合わせれば、あるいはセラウィス様を狙う魔手よりお守りすることも可能だったのではないでしょうか。

ルック「あのね……もしかしてキミレパントと話が合ってたんじゃない?」

はい。トラン大統領の地位にレパント殿が就かれてからロッカクとトランの結びつきは一層強くなりましたから。レパント大統領が英雄の間に展示されているコレクションの大半は、わたしを始めとするロッカクの里の者が収集したものなんですよ。

サスケ「俺も手伝わされた(遠い目)……カスミさんはあいつに逢って変わってしまったんだ……」

まあ、サスケ。セラウィス様をあいつ呼ばわりするなんて駄目でしょう。それにあの方が旅の間に使われていたマントは入手できたのですか?

サスケ「………………(涙)」

ルック「同情ぐらいならしてあげるけどね。悪いけど僕まで巻き込まないでくれるかい?」

2002/12/12(Thu)
  

第五章
クリス編

今回はクリス視点です/セラウィス

ゲド達がルビークへ向けて旅立ってから数日後、ゼクゼンの評議会よりクリスへ召喚状が届いた。判断に急を要する事件ばかりが続いたせいもあって評議会の了承を取らずに騎士団を動かしていたから、そろそろ来る頃だとは思っていたんだけど……。

ヒューゴ「闘うのにいちいち闘いに参加しない奴から了承を取らなくちゃいけないなんて、変なところだなゼクゼンってのは」
クリス「(苦笑)わたしもそう思うよ」

とはいえ、これ以上評議会を無視して事を進めるわけにはいかない。今後、ゼクゼン・グラスランド連合軍を運営していく上でゼクゼン商人達のバックアップは必要不可欠なものとなるだろうし。それに自分達の立場を蔑ろにされたことで腹を立てた評議員の誰かが私軍を動して炎の使い手の背後を突く、なんて事態になるのも避けたいしね。
現在評議会は、サロメの活躍もあって反ハルモニア派が多勢を占めている。加えて騎士団が炎の使い手として参加していることは既にハルモニアの知るところとなってしまっているから、報告さえ済ませておけば横槍が入ることもないだろう。
そんな経緯から、数名の供を連れクリスは一度ブラス城に戻ることになった。そこで提出する書類をまとめてからビネ・デル・ゼクゼに入ることにしたんだ。

ところがブラス城に到着した途端、新たな問題が持ち上がった。アルマ・キナンの娘、ユミィがクリスに助けを求めに来たんだ。彼女の話によればアルマ・キナンはその後、仮面の神官将の攻撃に幾度となくさらされているらしい。
ユンが祈りを捧げた祭壇がハルモニアの手によって壊されようとしていることを聞かされたクリスは、迷うことなくアルマ・キナンへ向かうことを決めた。評議会への報告を含めた事後処理をサロメに任せ、ビュッデ・ヒュッケ城からの旅装を解くこともなく馬を走らせたんだ。

でも、当然の顔をしてクリス達に同行してきたユミィは本物ではなく。その正体はハルモニアの女魔導師が変化の術を使ったものだった。

ユミィ「ねぇ、クリス。あなたは英雄と呼ばれるのを嫌っていたはずでしょう。なのにどうしてこんなことをしているの?」
クリス「ユミィ……?いや、違うな。お前はあの魔法使いか!!!」

イクセの森に入った時、彼女が発した問いにクリスは少なからず動揺をした。それはずっと胸の奥でわだかまっていたことだったから。セラはその心の隙をつきクリスから紋章を奪い去ってしまったんだ。

でもね、クリスが意識を失う寸前、セラが告げた言葉は彼女なりの気遣いが含まれていたんじゃないかなって思うんだ。
セラとクリスは何となく雰囲気に通じるものがあるから。恐らくそれは彼女自信が抱いたことのある望みでもあったんじゃないかな。
普通の女性としての幸せを掴むという望みを自分は叶えることが出来なかったけれど、せめてクリスだけは……という祈りが込められているように感じられたんだけど。

クリス「……確かに、迷いがなかったといえば嘘になる。だが、わたしはこの大陸を護るために戦っていくと誓ったんだ。ユンの捧げた祈りのために……そして自分自身の為に」

……うん、そうだね。
クリスが真の紋章を持っていてもいなくても。君を大切に想ってくれる人達がいる。クリスもまた彼等に同じだけの想いを抱いているのなら、君を案じ帰りを待っていてくれる人達の為に早く帰ってあげることにしてね。

2002/12/15(Sun)
  

第五章
ヒューゴ編

……………。/ペルシュメガ

俺はあいつを……ユーバーを追わなければならない……。

カイネ「ユーバーさんならブラス城に侵攻しているところをお見かけしましたよ。ゲドさん達が出掛けてしまってからビュッデ・ヒュッケ城にひとりでお留守番していたヒューゴ君が慌てて援護に駆けつけてましたから」

………………。

カイネ「……ペルシュメガさん……?えっと、何をなさってるんですか?」

……お茶を………………。

カイネ「お茶?」

セラウィス「ペルシュメガ、グレミオがスコーンが焼けたって……」

…………。(いそいそと呼ばれた方へ向かってます/←微妙に嬉しそう)

カイネ「……セラウィスさん…………計りましたね?」
セラウィス「…………何のこと?(にっこり)」
カイネ「もう、邪魔はしないけどお手伝いもしない、って仰ってたのはセラウィスさんでしょうに……」
セラウィス「……僕は、ただペルシュメガとお茶を飲んでいるだけだよ」
カイネ「はいはい。でもこれ以上は駄目ですからね」
セラウィス「…………うん。わかってる」

カイネ「それにしてもペルシュメガさんって甘いモノがお好きだったんですね。スコーンに生クリームとジャムをたっぷりかけた上に、紅茶に蜂蜜まで入れてますよ・・・あ、ミルクも入れてる……(汗)」

2002/12/16(Mon)
  

第五章
コロク編

コロク編だ/ジークフリード

なぜわたしがこのような真似をせねばならん。

コロク「……クゥゥゥゥ……」

カイネ「いいじゃないですか。ケモノはケモノ同士、仲良くしましょうよ」

ユニコーンを犬風情と一緒にするでない!!

カイネ「そんなこと言ってると、シェラさんと一緒のお部屋にしちゃいますよ。彼女、森で乙女扱いされなかった一件を未だに恨んでますからね~。電撃ぐらいじゃ済まないかも……」

…………し、しかたない。そなたには日頃世話になっていることでもあるし、今回だけ特別に解説とやらを引き受けよう。

ブラス城の攻防戦は、急ぎ帰路を辿ってきたゲド・クリスの参戦に加えてハルモニアの協力まで得られたために圧勝を収めた。なんでも仮面の神官将とやらは、ハルモニア本国からも裏切り者として見なされてしまったらしい。

これにより炎の使い手達の軍に、ハルモニアの神官ササライとディアスが新たに仲間として加った。今は亡きユンとジンバの2名に敵方のユーバー、セラ、アルベルトそしてルックを加えれば108星が揃ったことになる。
そこで、今回は闘いの疲れを癒すため、しばしコロクの視点に立ち城の中を巡ってみることにした。

コロク「……クゥゥゥゥ……」

泣き方が情けないうえにいまいち冴えない犬コロクは、このビュッデ・ヒュッケ城が大層気に入っている模様だ。まあ、餌は貰えるし遊んでくれる人間には事欠かない、しかもその人間達は見ているだけで飽きない個性的な者揃いとくればそれも当然であろう。

城を散策するコロクに、様々な人間が話しかけてくる。犬好きの者、嫌う者とその対応は様々だ。扉を開けるという特技を披露したコロクに何名かが驚いていた。同じ畜生ながら犬以外の動物たちの声を聞くことはできないようだ。その仲間の犬達といえば食べ物のことばかりを考えていたがな。
意外だったのはトカゲの一軍で、シバなど人目を忍んではコロクを散歩に連れ出してやっているらしい。トカゲと犬の散歩か。……見ようによっては牧歌的と言えないこともない……かもしれん。

コロクを眺める者達の最大の関心事は、やはり首に巻いた風呂敷のことだ。どちらかというと中身よりも誰がいつどうやって首に巻いているかのほうに興味が寄せられている。……特筆すべきことはこのくらいだな。
城内にいる全ての者に話し終わった後、シンバの反応を見忘れてしまっていたことに気付いたが……これはもうどうにもならんことだからな。以上でコロク編は終了だ。再びヒューゴに話しかけて本編に戻るとしよう。

カイネ「お疲れ様でした~。ところで僕もひとつ疑問に思っていることがあるんですけど~?」

なんだ?

カイネ「ユニコーンゾンビってモンスターがいるじゃないですか。あれってやっぱりユニコーンが死んだ後の姿なんですか?」

一説には人間に乱獲されて無念のうちに生を終えたユニコーン達の怨念が凝った姿だと言われているが……ユニコーンは汚れなき生き物。そう簡単に魔性と化したりはせん。よってあれは全然別物だと思われる。

カイネ「ふ~ん、そうなんですか。でもそれって確かめた訳じゃないんですよね?……一度、試してみません?」

……………………。悪いが遠慮しておこう。

2002/12/20(Fri)
  

演劇を紹介します/ミリー&メグ

メグ「皆さんこんにちはー、メグです」
ミリー「ミリーで~す。こっちはボナパルトだよ~♪」
メグ「今日はわたしたち二人が劇場の演目についてご紹介します。楽しみだね~、ミリーちゃん(お菓子をとりだして)」
ミリー「うん、楽しみ楽しみ♪(オレンジジュースを飲みつつ)」

*** 演目1『マッチ売りの少女』 ***
主人公:ジョー軍曹
ナレーション:ハレック

ジョー軍曹「俺にはここは狭すぎる!大空に飛び立ちたいんだ!」
ハレック:「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!可哀想すぎる~~~~~!!!!!!!」

メグ「主人公って『少女』でなくてもなれるんだ……」
ミリー「ナレーションの人が泣き叫んでちょっとうるさいね~」
メグ「ねえ、アヒルって空飛べたんだっけ?」
ミリー「羽毛が凍っちゃうとあとで枕に加工できなくなっちゃうよね~?」

*** 演目2『オオカミ少年』 ***
主人公:ギョーム
ナレーション:ランディス
羊:パーシバル
オオカミ:ボルス

パーシバル「メエェ~……なんでこんな役を……」
ボルス「ガ、ガオ~~~……(汗)」

メグ「…………オオカミ少年ってこういう話だったっけ?」
ミリー「嘘付いちゃだめなのだ!」
メグ「でも、確かに日々生きていくうえで多少の嘘は必要よー」
ミリー「羊さん、情けない顔が面白い~~~」

*** 演目3『ウィリアムテル』 ***
主人公:エース
ウィリアム・テル:ユミィ
村人:トウタ

ナディル(劇場支配人)「……ただいま大変お見苦しい場面をありましたことをお詫び申し上げます・・・」
トウタ「ミオさんっ、ミオさんっ、早く医務室の準備を!!」

メグ「トウタ君、演技はベタベタなのにこういう時になると生き生きするんだね」
ミリー「すごいねぇ、サックリ刺さってるよ~~」

*** 演目4『ロミオとジュリエット』 ***
ロミオ:フレッド
ジュリエット:ヒューゴ

ロミオ「俺を愛しているというのなら、このフレッド・マクシミリアンの前にもう一度姿を見せてくれ!!」
ジュリエット「いや、君のことが嫌いってわけじゃないんだけどね……なんとなくね……」

メグ「フレッドさんって楽しいよね。マッチ売りの少女のナレーションとかも面白いし」
ミリー「ボナパルトも出演させてくれるといいな~」

メグ「普通、脚本はこの4つだけなんだけど、幻水1と2(と外伝)のデータを読み込んでいた場合はあと二つ脚本が用意されてるらしいわ」
ミリー「1と2のお話が劇になってるんだって~」
メグ「そちらの2本は、いろいろと波乱含みなのでまた次回にお送りします。提供はメグと……」
ミリー「ミリーとボナパルトでした~♪」

2002/12/21(Sat)
  

演劇後編で~す/ミリー&メグ

メグ「先日に引き続き今回もわたしたちがお送りします」
ミリー「もちろんボナパルトも一緒だよ~」

*** 演目5『対決!ネクロード』***
ネクロード:ナッシュ
カイネ:リリィ
シェラ:からくり丸Z
フリック:エッジ

リリィ「このっ!!変態ロリコン吸血鬼!!アンタなんかぎっちょんぎっちょんにしてやるんだから!!!」

メグ「リリィちゃんってそういえばネクロードのお嫁さんにされるところだったんだよね……」
ミリー「トラウマだよね~」

ネクロード「妖怪オバ・・・・・じゃなかった、シェラ長老!!すいません、わたしが悪うございました。お許し下さい~~~(懇願)」

メグ「……なんか、随分なさけない吸血鬼ね。ナッシュさんだからしかたないのかもしれないけど(←酷)」
ミリー「あの人は~、ミリーのお父さんなの~~」

からくり丸Z「我ガ月ノ紋章ヨ。シバシノ眠リニツ・・・・・・・グゲっ?!!!ゲ・・・ガガガ~~~~~」

メグ「からくり丸Z!元気そうね~と思ったけど、壊されちゃったわ……」
ミリー「雷がビリビリなのだ~」

謎の声「なぜ、わらわの役をこのようなタルに演じさせておるのじゃ?」
ナッシュ「ま、まて、まて!落ち着け!!俺じゃない、俺のせいじゃないんだ~~~!!!」
謎の声「問答無用!!!」
ナッシュ「ひぇ~~~~~~~!!!!!!」

ナディル(劇場支配人)「……舞台セットが故障致しました関係で本日の劇はこれで打ち切りとさせて頂きます。皆様には大変ご迷惑をお掛け致しております」

メグ「劇場支配人の人、何があっても動じないんだね」
ミリー「あのお面、むささびのお面と変えちゃだめなのかな?」
メグ「ねえ、ところであのエッジって子、演技力の説明で『やる気はないが思い入れの強い役なら……』って書いてあったんだけどあれってフリックさんとかビクトールさんの役のことよね?」
ミリー「髪の毛の色が似てる~~」
メグ「だよね、だよね!!星辰剣持ってるからビクトールさんの関係かな~って思ってたんだけど、もしかするともしかするよね」
ミリー「ビクトールさんとフリックさんってどこにいったんだろうね~~」

*** 演目6『帝国の愛』 ***
バルバロッサ:ルシア
ミルイヒ:クイーン
セラウィス:ビッキー

メグ「なんか、これまでの出演者は皆ウケ狙いだったのに、これだけ急にキレイどころを揃えたのね……ビッキーちゃんが多少アレだけど……」
ミリー「それはね~、さっきから、変な出演者さんが出るとあの人が劇場ごと吹き飛ばしちゃうからなの~」
メグ「………………(トレンチコートに帽子を目深に被った人物を振り返り)カ、カイネ君…………」

謎の少年「しーっ!駄目ですよ名前呼んじゃ……って、よく僕ってわかったね」
メグ「そ、そりゃあ……まあ(汗) そ、それより舞台の邪魔したら駄目じゃない」
謎の少年「だって!あの人達セラウィスさんの役をお顔の不味い奴にばっかりにさせようとするんだもん!」
メグ「自分の役は誰が演じても平気なのにね……それにしても随分と脚色された内容よね」
謎の少年「ミルイヒ殿が書いたらしいからね~、あの人とは一度ゆっくり話をつけなくちゃ~~♪」
メグ「そ、そう……頑張ってね」
ミリー「がんばってなの~~」

メグ「カイネ君がトランにお出掛けしちゃったところで総評です。フレッドさんはどの劇に出演してもらっても楽しく演じてくれます」
ミリー「ナッシュさんのネクロード戦のナレーションって楽しい~。ボナパルトも大好きだって」
メグ「あとはゲドさんとかかな。マッチ売りの少女のナレーションなんてシンプルで好きよ」
ミリー「ウイリアム・テルでのジャックさんの村人役もコメントに味があって素敵なの~」

メグ「……わたしたちって一回もまともな配役の劇を見てないわよね(滝汗)」

2002/12/22 (Mon)
  

今回で50回目になりました/カイネ

50回ですよ。莫迦ですね~。こんなに長い間やっていてどうして終わらないんでしょうね。

とりあえず、このままずっとってわけにはいきませんから広間に足を踏み入れてみることにしました。

シーザー「……やっと来たか。遅かったよな……本当に(しみじみ)」

ハルモニアの神官ササライ君とディオスさんの説明によるとどうやらルックはダックの村の北にあるシンダル遺跡の神殿で五行の真の紋章を使って『儀式』を行おうとしているらしいです。
その儀式とはほかの4つの紋章を使って真の風の紋章を壊すこと。……真の紋章とは世界を構成する力、すなわち神の形態のひとつであると言われています。つまりルックは神様を殺そうとしているってことですよね。
真の風の紋章はルックの魂に絡み付いているそうですから、それを壊せば当然ルックも生きてはいないでしょう。彼にとっては神を殺すことよりもこちらのほうに大きな意味があるみたいですけど。
ついでにその余波でグラスランドとゼクゼン、それに都市同盟の一部が巻き込まれて百万人ぐらいの人が死んじゃうらしいです。だからササライ君達もヒューゴ君達も絶対に阻止しなくっちゃって慌ててるわけなんですね。
まあ、僕は口出ししないって決めましたし(正確にはセラウィスさんがそうするって決めたことに従ってるだけなんですけど)ここはあえて嘴を挟まず静観することにしましょう。

ところで、ゲーム中に頻繁に出てくる五行の真の紋章って中国古来より伝わる五行説からきているものですよね。
日記も50回目になりましたし、たまにはためになることでもお知らせしましょうってことでちょっとだけこの五行説について説明することにします。

五行説は、森羅万象の生成・変化を木、火、土、金、水という5つの要素で説明しようとする原理のことです。
この5つの要素について詳しくあげると、

木気:木が持つ形態や性質を観念化したもの。春の象徴。東を司ってます。五神では青龍です。
火気:火が持つ形態や性質を観念化したもの。夏を象徴。南を司ってます。五神なら朱雀ですね。
土気:土が持つ形態や性質を観念化したもの。季節間の推移(土用)を象徴。 中央を司ってます。言わずとしれた黄龍さん。
金気:金属が持つ形態や性質を観念化したもの。秋を象徴。西を司ってます。五神は白虎。
水気:水が持つ形態や性質を観念化したもの。冬を象徴。北を司ってます。玄武ですよね。

ってことになります。上の並びは「相生五行」です。
相生っていうのは簡単に言うと仲良しさんな関係のことで、木は火で燃えて灰になり、灰になると土になり、土が固まれば金になって、そこから水が生じるという考え方のことです。
逆に相剋というのは仲の悪い関係で、木は土の滋養を抜き取るし、金は木を切り倒します。火は金を溶かして、水は火を消しちゃうっていうことです。
このほかにもう一つ比和というのがあって、これは……う~ん、なあなあの関係?ってことでしょうか。良くも悪くも調和しているので一度進み始めると後は坂道を転げ落ちるように……とまではいかなくても、どんどんその方向に突き進んでいっちゃうってことらしいです。木と木とか火と火とか同類さんが並んだときの関係ですね。

ところでルックの紋章は風ですから単純に考えると金気なような気がするんですけど、そうするとササライ君の紋章は土なので相生の関係(土生金)にあたるんですよ。でも、どうしたって仲良しさんには見えませんよね、この二人。
なのでここはあえて金=雷と考えて風の紋章は木気に当てはめるのが妥当みたいです。これなら木剋土でルックがササライ君の力を制しちゃう関係になります。
幻水2の時にルックがササライ君を真の風の紋章で押さえつけていた理由もこれなら納得できますよね。もっともこれでいくとルックに敵対するのに最も適した紋章は火よりも雷の紋章だってことになりますけど。
……というか、言っちゃってもいいですか?五行の関係とこれまで(1~外伝)の話の流れでいくと風(木)よりも土が問題を起こす方が自然だと思うんですが……。
それだったら他の4つの紋章が協力して五行の中央に位置する紋章(土)を制することになりますし、木気と火気は相生してますから、軍のリーダ(火気)をルック(木気)がサポートするっていう関係がよりしっくりときます。加えてセラさんは円の神殿(ハルモニアの神殿です)の出身らしいですから、星見のおばさんの下僕をしているルックよりはササライ君と仲良しになる機会の方が多いし普通はそうなりますよね。
さらにつけ加えると、星見のおばさんに誘拐された(推定)ルックは最初から自分のことについてある程度知っていたわけですけど、お坊ちゃん育ちのササライ君は何も知らされずに生きてきたじゃないですか。なにかの切っ掛けで真実を知った時に衝撃を受けてプチってきちゃう可能性は、彼の方が断然大きいです。
誰もが密かに胸に抱いていた疑問をあえて繰り返すことになっちゃいますけど、今回のルックの扱いって本当に最初から決まっていたことだったんですかね?

シーザー「その疑問ももっともだと思うんだが……いい加減俺に話をさせちゃくれないか(涙)」

あ、そうでしたね。すいません。でもヒューゴ君、決戦に行くか?って質問に『ちょっと待って』て答えられてましたから。まだ心の準備ができてないんだな~って思って話を逸らしちゃいました。
上のはあくまで僕の推測なんでもしかしたら実際は違うのかもしれないんですけど……やっぱり釈然としないものは残りますよね。

2002/12/23(Mon)
  

(おろおろ)/グレミオ

あああ~、ついに最後の集団戦闘が始まってしまいました~。
一体どうしたら良いのでしょう~~~。
やはり、ルック君と闘うしか道はないのでしょうか……。

儀式の地を背面に布陣を敷かれているのは、ユーバーさんとセラさんです。
今回はユーバーさんの方を撃退すれば勝利条件を満たせるようですね。
彼等も必死です。カラヤの戦士、リザードさん、ゼクゼンの騎士の幻を纏った魔物達がセラさんの魔法によって次々と召還されてきます。
偽りだとわかっていても、同胞の姿をしている相手には躊躇いたしますよね。

けれどセラさん、もう立っているのもやっとじゃないですか。駄目ですよ女の子がそんな無理しちゃ。

セラ「いいえ、いいえ!わたしの全ての力を使い切っても、ルック様のために……」
ジョー軍曹「……ちょっと待て!」

どうかなさいましたか?ジョルディさん。

ジョー軍曹「リザードとカラヤの姿はあるのに、どうして幻の中に我がダックランの戦士の姿がないんだ?」

弱そうだからじゃないですか?(あっさり)
セラさんの力にも限りがあるようですし、戦意を削ぐつもりなら強い相手から行ったほうがいいですものね。力の強いリザードや勇猛果敢なカラヤの戦士、それに鋼鉄の鎧に身を包むゼクゼン騎士達は同胞の意気を挫くだけでなく、他部族の者が対峙すれば萎縮してしまいそうな威圧感に満ちていますから。

ジョー軍曹「ダックランはその昔、一番最初に炎の英雄に力を貸した部族だぞ!!」

そうは申されましても……困りましたねぇ。セラさんお疲れの所申し訳ありませんが、アヒルさんが喚いてますのでちょっとだけ彼等の幻を出してあげてくれませんか?

セラ「は、はい……」

ハレック「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!うまそうな奴らがいっぱいいる!!!」
クリス「どうやら敵は力尽きたらしい!皆わたしに続け!!!」

……皆さん勢い付いちゃいましたね。

ジョー軍曹「…………………………」

急遽アヒルさん達の幻を消し、気を取り直して戦闘を再開しました。
さすがにヒューゴ君はお強いですね。何度も攻撃を繰り返して、一度で敵を倒してしまいます。
意外だったのは、トーマス君達の隊で、セシルさんトーマスさんの好戦ぶりはもちろんのことビッキーさんの魔法が驚異的な威力を発揮しているようです。
数が多かったために少々時間はかかりましたが、味方にさほどの損害を与えることもなくこちら側が圧勝を収め、セラさんとユーバーさんは神殿の内部へと消えていきました。

さあ、次はついに儀式の神殿の内部に潜入です。
一体どうなってしまうのでしょうか。わたしとしてはあまり坊ちゃんが哀しまれるような展開にはなって欲しくないのですけど……。

2002/12/26(Thu)
  

いよいよ大詰めです/カイネ

神殿の内部はいくつもの部屋に分かれて入り組んでましたが、ササライ君の説明によりだいたいの構造を知ることが出来ました。ここはハルモニアが以前調査に入ったところだったんですね。
各部屋には奪われた真の紋章が置かれ、神殿の中に結界を作り出していました。
この結界の中に五行の真の紋章の力が満ちたとき、仮面の神官将ルックは本懐を遂げることができるみたいです。
時間との勝負だということを悟った一行は4つのチームに分かれ、紋章の奪還を行うことにしました。
真の雷の紋章奪還にはゲドさんとハルモニア辺境警備隊のメンバー達(+アイラさん)。
真の水の紋章奪還にはクリスさんと六騎士の皆さん(+ルイス君)。
真の土の紋章の間にはササライ君、ディオスさんのハルモニアメンバーに加え、トーマス君とセシルが向かうことが決まりました。
そして、真の炎の紋章奪還には炎の英雄の志を継いだヒューゴ君にフーバー・ジョー軍曹・ルシアさん・ナッシュさん(+同行者にシーザーさん)といった顔ぶれで挑みます。

まず、ゲドさんが真の雷の紋章が封じてある間に向かい、その手に取り戻すことに成功しました。ユーバーさんにはトドメを指す寸前で逃げられてしまいましたが、彼と決着をつけるのはゲドさんの役目ではないですから、これでいいんでしょう。
次に真の水の紋章の部屋に入ったクリスさんが、やっとのことでセラさんを押さえつけました。六騎士の皆さんって魔法全然だめですよね。もうちょっと修業積んだほうがいいんじゃないですか?

六騎士「…………面目ない(汗)」
ルイス「僕が騎士になったらきっと魔法でもクリス様のお役に立ってみせます!毎日お風呂で犬かき30往復してますから!!」
クリス「…………犬かき??」

ルイス君そういえばお風呂でロディ君に妙なこと吹き込まれてましたよね。あれ、真に受けてたんですか?(汗)……もっとも、ロディ自身も師匠の教えとして頑なに信じ込んでるみたいですけど。

真の水の紋章を持っていくなら自分の屍を乗り越えていけというセラさんを、クリスさんは気絶させるだけにとどめました。気安く命を捨てるような真似をするなとクリスさんは憤られてましたけど……別にセラさんは簡単な気持ちで命を投げ出そうとしたわけじゃないんじゃないですかね。
それだけ一途に彼女はルックを想っていたんだと……僕は思います。100万の命よりも……自分の命よりも大切にしたいものがセラさんにはあったというだけのこと。クリスさんにもいつか大切な人ができたら彼女の気持ちがわかる日がくるのかもしれませんね。

真の炎の間には前述の2部屋のような番人も罠もしかけられてませんでした。
いえ、番人はいたんです。でもそれは闘う気もなければやる気もま~ったくないアルベルトさんでした。軍師って頭でっかちなせいか運動不足の人が多いですもんね。シュウさんも100m走ると息切れする人でしたし。

アルベルト「ふっ、軍師に必要なのは時代の流れを読みとる能力と、その決着点まで速やかに導くことのできる指導力だ。闘いなどは筋肉莫迦共に任せておけばいい」

でも今はお一人ですよ。ヒューゴ君達が問答無用で殴り倒すつもりでいるとなると…………。

アルベルト「…………。(こっそり汗) れ、冷静に話し合おう弟よ。暴力はよくない」
シーザー「……って、あー、てめっ!ろくに話しもしないうちに魔物召還して転移魔法使ってんじゃねぇよ!!」

アルベルトさんの目的はハルモニアで確固たる地位を確立することだったんですね。だから目的が果たせた今、ルックに義理立てする必要はないわけです。
それでも、『彼の孤独な魂を救ってやって欲しい』なんてシーザーさんに言い残していったのは、少しはルックのことを気に掛けてくれていたってこと……なんでしょうね。

封印されていた真の炎の紋章をヒューゴ君がその右手にとりもどしたところで、クリスさんとゲドさんが駆けつけてきました。ササライ君達の姿が一向に現れませんが神殿の封印は解けましたから、ともかくも真の土の紋章は取り戻したんでしょう。
これで、ルックのいる場所に通じる道が開けました。最後にもう一度メンバーを選びなおして最終決戦へ赴きましょう。

2002/12/27(Fri)
  

本編の最後です/カイネ

真の炎の紋章が封じられていた間よりも更に先、神殿のもっとも奥深まったところでルックはヒューゴ君達を待ち受けていました。
最終決戦に挑むメンバーは、ヒューゴ君、フーバー、クリスさん、ゲドさん、フッチ、ビッキー(大)の六人です。これにサポートメンバーとしてトウタと、引き続きシーザーさんが同行することになりました。

真の紋章の継承者は、その紋章の記憶を伺い見ることが出来ます。まだ紋章を受け継いだばかりのヒューゴ君にはぴんと来ないかも知れませんが、生まれたときから紋章に縛り付けられていたルックはその光景を見つめ続けてきました。
それは法と秩序、理と混沌の争いに決着がつき、世界に静寂が訪れる未来。人も動物も、植物も。生き物の一切いなくなったそれはある意味平和で無機質な、ひび割れた大地にただ乾いた風が吹くだけの世界です。
未来はひとつではないけれど。ルックが見た光景が現在もっとも可能性の高い結末であることは間違いありません。絶望よりも深き淵を知ったルックは、未来を変える切っ掛けをつくるべく今回の事件を引き起こしました。

ヒューゴ君には、その考えが理解できないみたいです。ルックが檻のようだと感じている世界は、彼にとっては果てしなく広く、未来は無限に広がる可能性に満ちていましたから。
そんな二人の間に理解など生まれるはずがありません。最後の争いは起こるべくして起こりました。

五行の封印こそゲドさん達の活躍によって解かれたものの、神殿内はすでに紋章の力で満ちています。ルックはそれを使って己の魂に絡みついた真の風の紋章の力を全て引き出してしまいました。
ですが、ルックの手元に残っているのは真の風の紋章ひとつのみ。他の3つの紋章を有する継承者達がそれを制することは、容易くはないにせよそう難しいことでもありませんでした。
結局、真の風の紋章にできたことといえば、古びた神殿ひとつを崩壊に導くことだけ。
力尽き膝をつくルックにヒューゴ君がトドメを刺すことを躊躇っている間に、建物はどんどんと崩れ落ちて──。ヒューゴ君はフッチに促されつつルックをひとり残して神殿から脱出することになりました。
グラスランドとゼクゼンに戦火を巻き起こし、100万もの命を奪おうとしたルック。
その彼の命を奪うことを寸前で躊躇したのは、彼に同情したからですかヒューゴ君?

それでもヒューゴ君はルックのことが最期まで理解できなかったんですね。

ヒューゴ「できるわけないだろう!あんな奴!!一体どれだけの人間が犠牲になったと思ってるんだ!!!」

でもね、例えば『来年確実に飢えることがわかっている』年があったとするでしょう。そうしたらたとえお腹が空いたとしても食べ物の摂取量を控えて次の年に繋ごうとしませんか?
翌年のことを考えなければお腹を満たすことが出来るけど、先のことを考えあえて苦しい道を選ぼうとはしませんか?

ヒューゴ「それは、そうだけど……っ!!でも、それとこれとは話が違うだろう!!」

同じことですよ。紋章の描いた結末がどのくらい先のことなのかはわかりませんが、今現在の時点で僕達はそれが確実に訪れる未来であることを知っています……ヒューゴ君達が次の年に穀物が不足することを予想できるのと同じくらいには。
それは、確かにこの時代に生きている人達にとっては関係のないことなのかも知れません。辛い思いをするのも苦しい思いをするのも自分達ではないんですから。だけど、僕達には……真の紋章を継承し不老となった者達にとっては他人事じゃないんです。それは己の身に受けることになるかも知れない出来事……だったら、食料を節制するのと同じように、今このときに出来る手段を講じておいてもいいと思いませんか?

ヒューゴ「引き替えにされるのは100万もの人の命だぞ!食料をちょっと節制するのとはわけが違う!!」

そうですね。食料を制限しなければ、翌年何人もの人が飢え死にするかも知れない。たかだか100万程度の命を救ったことによって、遠い未来、数千、数億もの命が失われるかも知れない。
いまのヒューゴ君達は100万人の命を救った英雄だけれど、時の向こうで世界終焉の瞬間に立ち会うことになる人達には、世界を崩壊に導いた大罪人と呼ばれているかもしれませんよ?

ヒューゴ「……っ!でも、でもやっぱり俺は納得できない!こんな……こんなやり方は間違ってる!!」

セラウィス「カイネ……もう、その辺にしておいてあげて」

……セラウィスさん……。

セラウィス「いつか、ヒューゴもルックの見た深淵を自分の痛みとして感じる時が来るのかもしれない……こないかもしれない。けれど少なくともルックは、彼が理解を示すことを望んではいなかった。ルックの行ったことをヒューゴは絶対に許せないと告げた。それでも運命は人の手で変えていけるはずだと言った。ならばヒューゴはルックとは違う方法で運命を変えていく術を得るのだろう。ルックはヒューゴの言葉を最後の希望として受け取ることが出来たと思うよ」

でも、セラウィスさん。そのヒューゴ君の描く未来の中でルックは……排除されるべき悪としてしか存在できないでしょう。それじゃ、ルックがあまりにも救われないと……っ。

セラウィス「泣かないでカイネ。運命は人の手で変えていけるもの。だけど、それはただ一人の力によって成し遂げられるわけではないでしょう?それならヒューゴの望むような方法で、ルックが受け入れられている未来の形だってあるかもしれない……僕達だっているんだしね」

……そうですね。

大陸の平穏を取り戻した英雄達は、再び自分があるべき場所へと帰っていきました。
一時的に協力したとはいえ、ゼクゼンとグラスランドが完全に友好関係を結んだわけではありませんし、ハルモニアもまた同様です。
大地に争いが絶えることはなく、いずれまた血が流されるようになります。
ここにあるのはひとたびの平穏でしかありません。
けれど、この闘いは伝説となって語り継がれ、人々の心に長く希望の灯火を照らすでしょう。人種も、国も関係なく、ただひたすらに命の尊さを謳い続けた炎の使い手達の志を、その誇り高さを。忘れずにいる限り、人は人智を越えた驚異にさえ立ち向かっていく勇気を得るのかもしれません。

……たとえルックが、多くの人の命を奪った悪者としてしか記録の中に残されないのだとしても。

セラウィス「人の善悪など見る立場によって変わるもの。グラスランドにとっては大陸を揺るがした極悪人でも、トランやデュナンにとっては新たなる国の創設に貢献した立役者のひとりとして数え上げられるだろう。けれど彼を知らない人達が彼の知らないところで交わすうわさ話にどれだけの価値があるんだろうね。彼を知っている僕達にとっては、大切な友人であることに変わりないんだし。……大切なのは彼が己の心を最後まで偽らなかったこと。絶望に身を委ね、運命に阿ることなく自分で立とうとした彼を僕は尊敬する」

はい。人は己の信じた道を進んでいくしかありませんからね。喩えそれが、他者の目には凶行として映るようなことであろうとも。
ルックの志は半ばで挫かれてしまいましたけど、ヒューゴ君の中に別の形として受け継がれたと言えないこともありません。
ならばまだ、人の道は続いていくのでしょう。少なくともルックが、僕達が、ヒューゴ君が。人の心を抱き続けている間は。

幻想水滸伝3の本編はこれで終了になります。次は最終章、ルック編です。
皆様には今しばらくのお付き合いをお願いします。

2002/12/28(Sat)